高齢者の正しいクスリとの付き合い方

クスリの「代謝」を行う肝臓の機能が低下すると作用が強く出る危険

アルコールとクスリの同時摂取でクスリの代謝が不十分になる

 クスリの「吸収」と「分布」の次は、「代謝」についてお話しします。

 代謝というと少しイメージしにくいかもしれませんが、「体の中で別の形に変わること」です。中にはまったく、あるいはほとんど代謝を受けないクスリもありますが、多くのクスリは代謝されます。代謝によって別の形になることで作用を失うクスリもありますし、逆に作用を発揮するようにデザインされているクスリもあります。

 代謝の主な場所は肝臓です。肝臓ではさまざまな種類の代謝酵素が産生されているため、多くのクスリが肝臓で代謝されます。また、筋肉にも代謝酵素があるので、筋肉で代謝されるクスリもあります。

 肝硬変のような疾患で肝臓の機能が低下している場合には、クスリの代謝機能も低下してしまい、その作用が強くなるだけでなく、副作用が発現する可能性が高くなるケースもあります。ただ、肝臓の疾患があったとしても代謝機能は保たれている場合もある(個人差も大きいです)ので、一概にそうだとはいえません。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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