高齢者の正しいクスリとの付き合い方

クスリの「代謝」を行う肝臓の機能が低下すると作用が強く出る危険

アルコールとクスリの同時摂取でクスリの代謝が不十分になる

 一方で、高齢者はどうしても加齢に伴い体の生理機能が低下してしまい、これは肝臓の機能も例外ではありません。だからといって高齢者に対するクスリの投与量にこれといった決まった指標はないのですが、「作用が強く出たり副作用のリスクが高くなる」ということを念頭に置いて、薬剤師は高齢者の薬物療法に関しては特に注意深く経過を見るようにしています。

 疾患や生理機能の低下以外にも代謝に影響する要素はいくつもあります。代表的なものが「アルコール」と「他のクスリとの相互作用」です。クスリと同様にアルコールも肝臓で代謝されるため、アルコールとクスリを同時に摂取すると肝臓の機能はアルコールの代謝も行わなければならなくなり、クスリの代謝が十分にできなくなる可能性があるのです。高齢者の場合はここに生理機能の低下が加わるので、クスリを安全に使用するためにもアルコールの摂取は極力避けたほうがよいでしょう。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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