医者も知らない医学の新常識

新しい大腸がん検査の実力は? 便潜血検査のみより高精度

大腸がん検査は「便潜血検査」が一般的だが…

 皆さんは「大腸がん」の検診を受けていますか? 大腸がんは早期に見つかれば治る可能性が高いがんで、検診で早期発見することが重要と考えられています。通常行われている大腸がん検診は、便を採取して、そこに微量の出血がないかどうかを調べる検査です。「便潜血検査」と呼ばれています。この検査はがんの発見に有効ですが、痔など別の病気による出血でも同じように異常になってしまうという欠点があります。

 それでは、もっと大腸がんだけで異常が検出できる検査はないのでしょうか? 最近注目されているのが、便で複数のがんと関連のある遺伝子を調べて、便潜血検査と組み合わせる、という方法です。これを「マルチターゲット便中RNA検査」と呼んでいます。

 今年の米国医師会の医学誌に、大腸がん検診におけるこの遺伝子検査の有効性を検証した研究結果が発表されています。アメリカで9000人近い検査結果を分析したところ、大腸がんと診断された人の94%は遺伝子検査で陽性と判断されました。これは便潜血検査のみの78%と比較して数段高い診断率です。

 日本では別個に、血液でがんに関わる遺伝子を検出する方法も研究が進められていて、高い診断率が期待されているようです。まだこうした検査が簡単にできるわけではありませんが、近い将来、血液や尿、便の検査によって多くのがんが早期発見可能となるかもしれません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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