医者も知らない医学の新常識

「対面vsウェブ会議」脳が活性化するのはどっちだ?

写真はイメージ

 新型コロナの流行期には、職場などの会議は、インターネットを活用した、ウェブ会議が主流になりました。人間同士が対面で話をする機会を、なるべく減らすことが、感染予防のためには正しい生活であるとされ、仕事の会議のみならず、友達同士の集まりや飲み会さえ、オンラインで行うことが広まりました。

 新型コロナの流行が落ち着き、見かけ上は通常の生活が戻ってきてからも、会議は対面ではなくウェブで行うことの方が一般的になっています。このように、モニターなどの画面を通して話をすることは、実際に会って話をすることと比較して、何か脳の働きに違いがあるのでしょうか?

 今年の神経画像解析の専門誌に、興味深い研究結果が発表されました。3分のちょっとした試験を、対面で行う場合とモニターを通して行う場合とに分け、特殊な機器を用いて脳の働きを測定します。その結果、モニターを介して対話する場合と比較して、実際に対面で対話を行うと、脳の社会的な活動に関わる部位の活性が高まり、相手の顔もより強く記憶されました。どうやらモニターで画像を見る場合と比較して、実際に対面で対話を行うと、相手の印象をより強く肯定的に脳は認識するようです。「実際に会って話さないと仕事にならない」というような考え方は、時代遅れのものと思われがちですが、意外に最新の脳科学で裏付けされた知見でもあるのです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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