高齢者の正しいクスリとの付き合い方

2つの作用がある「アスピリン」は服用する時に注意が必要

「アスピリン」には2つの作用がある

 狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などで病院から処方されるアスピリンの1錠あたりの含有量は81~100ミリグラムとなっています。それを1日1錠服用している方がほとんどで、多くても3錠(300ミリグラム)までとなっているはずです。アスピリンの解熱鎮痛作用を発揮させようとすると1回500~1500ミリグラムの服用が必要になるので、血をサラサラにさせようとしたときに服用する量がいかに少ないかがお分かりになると思います。

 こうした2つの作用があることで、注意すべき点が出てきました。それを「アスピリンジレンマ」といいます。血をサラサラにする量のアスピリン服用中の人が、解熱鎮痛薬として追加で多い量のアスピリンを服用したときに起こります。多い量のアスピリンを服用すると、たしかに解熱鎮痛作用を発揮しますが、同時に血小板の凝集を抑制する物質(プロスタグランジンI2)の合成も抑制してしまいます。つまり、血小板凝集に必要な物質と血小板の凝集を抑制する物質両方の合成が抑制されることで、血をサラサラにする効果が打ち消されてしまう可能性があるのです。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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