感染症別 正しいクスリの使い方

【チャーハン症候群】食中毒を起こすセレウス菌は食べ物を室温で放置することで増殖

見た目やにおいの変化がないので厄介

 セレウス菌による食中毒はチャーハンやピラフ、スパゲティや焼きそばなどが代表的な原因食品として挙げられます。セレウス菌は、調理後に室温で長時間放置することで増殖します。厄介なのは、食品においてセレウス菌が増殖し、いわゆる腐った状態になっても見た目やにおいの変化がないことです。しかも、セレウス菌は90度で60分の加熱にも耐える芽胞(熱に強い殻のようなもの)を形成し、生き残ります。

 発症は食後30分から最大15時間後とされており、一般的に吐き気、嘔吐、下痢、腹痛を引き起こします。通常は短期間で治り、治療も水分補給のみですが、重症例には点滴を投与するケースもあります。セレウス菌が産生した毒素による食中毒なので、抗生物質の投与は効果がありません。

 セレウス菌による食中毒は夏場に件数が多いのですが、どの季節においても調理した食べ物を室温で長時間放置しないことが大切です。調理後に小分けにして冷蔵庫で速やかに保存しましょう。

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荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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