疲労の謎がここまで分かった

疲労の謎がここまで分かった(3)なぜ軽い運動が疲労を減少させるのか…酵素の産生を増やす

軽い運動により疲労回復力が増強される(写真はイメージ)

 どうすれば「生理的疲労」、疲れがとれるのでしょうか。

 この連載の1回目で「疲労感」と「疲労」とは、違うものだということに触れました。「疲労感」とは「休みたい」という気持ちです。過剰な活動によって体の組織に障害が生じている時、脳にその危険を知らせてくれるのが「疲労感」という感覚です。一方、疲労感の原因となる「疲労」は「細胞の停止や細胞死」です。

 意外かもしれませんが、「疲労感」を抑制する一つが、一般的に「ストレス」と呼ばれるものです。正しくは「ストレッサー」といいます。ストレッサー(ストレス源)が心身に作用すると、体内に副腎皮質ホルモンが分泌されます。と同時に交感神経が刺激され、アドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。

 アドレナリンやノルアドレナリンには興奮作用があります。疲労感の「休みたい」という感覚とは逆向きの感覚なので「疲労感」を抑制するのです。また、副腎皮質ホルモンには炎症を抑制する作用があります。

1 / 2 ページ

近藤一博

近藤一博

大阪大医学部卒。近著「疲労とはなにか」(講談社)

関連記事