「疲労感」のもとは、脳が炎症性サイトカインにさらされることにあります。炎症性サイトカイン産生を抑制することで疲労感を弱めるのです。仕事のために一晩徹夜したけど意外に元気、といった経験をした人も多いでしょう。
しかし、この状態は、「疲労感」が抑制されているだけなので、「疲労」すなわち細胞の障害は蓄積されていきます。ドリンク剤を飲んで「疲れがとれたような気がする」という現象も、「疲労」の減少ではなく、「疲労感」の減少だと考えられます。
ならば、「疲労」そのものを減少させて、組織の障害を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。
「リン酸化eIF2α脱リン酸化酵素」という長い名前の酵素があります。この酵素には、生理的疲労を回復させる作用があります。つまり、この酵素を増やせば疲労回復が期待できるということです。問題は、どうすれば「リン酸化eIF2α脱リン酸化酵素」が増えるのか。この酵素の産生を誘導するのは、軽い運動などの「疲労」なのです。
実際、被験者に軽い運動を1カ月から3カ月ほど続けてもらって、「疲労回復指数」を測定すると、軽い運動をしたグループは疲労回復指数が上昇していました。軽い運動によって適度な「生理的疲労」がもたらされたことにより、疲労回復力が増強されたためだと考えられます。(つづく)
疲労の謎がここまで分かった