前回、空気のない所で繁殖する「嫌気性細菌」、なかでもクロストリジウム属の細菌について触れました。クロストリジウム属細菌の中でも広く知られているボツリヌス菌では、ビン詰や缶詰といった空気を抜いた保存食品(特に自家製のもの)が原因になった食中毒が報告されています。
同じくクロストリジウム属細菌である破傷風菌も、破傷風を引き起こす細菌として有名です。破傷風菌は土の中などに存在し、多くの場合、傷口から侵入して感染を起こします。ワクチンがあるため予防できる病気なのですが、今でも国内で年間100人ほどが破傷風を発症しています。
ボツリヌス菌も破傷風菌も産生する毒素が非常に大きな問題となります。どちらの毒素も運動神経の伝達を遮断するのですが、ボツリヌス毒素の場合は筋肉が伸びたまま縮まなくなる弛緩性麻痺を起こすのに対し、破傷風毒素の場合は全身の骨格筋が硬く収縮して麻痺やけいれんを起こします。
感染症別 正しいクスリの使い方