高齢者の正しいクスリとの付き合い方

剥がれてしまった「貼付薬」は再び貼り直さないほうがいい

写真はイメージ

 その原因は皮膚の角質にあります。みなさんのご自宅にあるセロハンテープを腕などにしっかり貼り付けたあと、剥がしてみてください。剥がしたテープは貼る前のような透明ではなくなり、白く濁った感じになっているはずです。そうなる原因が角質です。角質は皮膚の表面にあって、テープと同様に貼付薬の粘着面と接触すると、それを剥がしたときに角質も一緒に剥がれてしまいます。つまり、貼付薬の粘着面に角質が張り付いた状態になってしまうのです。そのため、仮に再度貼り付けることができたとしても、クスリと皮膚の間に余分な角質が存在することになります。

 繰り返しになりますが、貼付薬にはクスリの成分が安定かつ確実に皮膚から吸収されるように工夫されています。余分な角質が存在すると、そういった工夫が十分に機能できなくなり、クスリの効果に悪影響を及ぼしてしまうのです。

 ごく一部の貼付薬は粘着面に角質保護成分を含有していて、一度剥がした後でも再度貼り付けることができますが、ほとんどの貼付薬はそれができません。ですから、もったいないと思うかもしれませんが、万が一、途中で貼付薬が剥がれてしまった場合には新しいものを貼ったほうがよいでしょう。特に汗をかきやすい季節は気をつけましょう。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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