介護の不安は解消できる

認知症の症状を和らげる「タクティールケア」とは?

手を使って相手の手や足、背中などに触れる

 認知症の行動・心理症状(BPSD)に有効とされているのが「タクティール(R)ケア」です。手を使って相手の手や足、背中などに触れるケアで、押したり揉んだりするマッサージとは異なり、ゆっくりと柔らかく包み込むように行うのが特徴です。1960年代にスウェーデンで未熟児医療に携わる看護師らによって考案され、実際にタクティールケアを受けた乳児に体温の安定や体重の増加が見られたことで、有効性が示されました。

 また、触れる行為は不安感やストレスを軽減させる「オキシトシン」を増やし、「コルチゾール」と呼ばれるストレスにより分泌されるホルモンを減少させると報告されています。そのため、不安を感じやすい認知症の方のケアにおいても効果があると、近年導入している介護施設も増えてきています。

 脳卒中で入院されていた70代の男性で、軽度の認知症も見られ小さな出来事に不安を感じ、病室内にとどまることができず出てこられることもありました。認知症の症状のひとつとして、言葉で表現することができにくくなることがあります。不安に感じる思いを歩き回ることで表現されていたのだと思われます。病棟内を歩いている際は横で背中をさすり、落ち着いているときは手と足のタクティールケアを続けたところ、1週間後には歩き回る行動は減り、表情も穏やかになりました。

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