医者も知らない医学の新常識

「ピロリ菌」除菌の効果は胃がんのほかにも影響がある

ピロリ菌の除菌は健康にとって重要(写真はイメージ)

「ヘリコバクター・ピロリ菌」は胃の粘膜に生育している細菌です。胃の中は胃酸によって殺菌されているので、細菌が生きていることはないと考えられていたのですが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を産生することで、胃酸を中和する働きを持っているのです。

 ピロリ菌が注目されたのは、この細菌の感染が萎縮性胃炎という胃炎の原因となり、そこから胃がんが発生しやすくなることが明らかになったからです。それ以外にも胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因にもなります。つまり、胃の病気の多くが、ピロリ菌が原因として起こっているのです。

 胃がんや潰瘍のすべてではありませんが、その多くがピロリ菌を除菌することにより、予防されることも明らかとなりました。それ以外にもリンパ腫という血液の病気の一種や、一部の貧血などの原因にピロリ菌がなることも報告されています。

 最近、それ以外に注目されているのが、大腸がんに対するピロリ菌の影響です。今年のがんの専門誌に発表された論文によると、アメリカの退役軍人の疫学データを解析した結果として、ピロリ菌に感染していると大腸がんになるリスクが18%増加していて、ピロリ菌がいるのに除菌をしないと、大腸がんで死亡するリスクが40%も増加することが報告されています。

 ピロリ菌の除菌は、胃の健康だけでなく、全身の健康にとって重要な治療であるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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