この肥厚性瘢痕やケロイドにもメカノセラピーが応用されている。
「強い物理的刺激を与える糖尿病の陰圧閉鎖療法と異なり、傷にかかる物理的刺激を分散し、過剰にかかる力を逃がします」
外傷や手術の傷は、皮膚の下層の真皮を縫う。しかし、これでは縫い口で真皮が上下左右に引っ張られ、真皮からできる肥厚性瘢痕やケロイドを引き起こす原因となる。
「そこで真皮よりもっと下層の皮下組織や筋膜を縫う。すると自然に皮膚が盛り上がって、傷口がぴったり合い、肥厚性瘢痕やケロイドができるリスクが減る。傷口が上下左右に引っ張られる力を分断したり弱めたりするために、切開の方法や向きも体の場所によって変えます」
事故で鼻の下に大ケガを負った女性は、「結婚式を迎える10カ月後までに傷口が残らないように治して欲しい」と小川准教授の外来を受診。鼻の下は唇などの動きで物理的刺激がかかりやすく、どうしても肥厚性瘢痕ができやすい。