介護の現場

遠くの子供より近くの他人

 東京・中野の一戸建てに住んでいた古橋美智さん(仮名、90歳)は10年ほど前に夫に先立たれてから独り身生活。5年ほど前から足腰が急に弱くなり買い物に行くのもつらくなった。

 そのため、1日3食、弁当屋からの配達で腹を満たし、現金が必要なときは近所に住む古い友人、畠山裕美子さん(仮名、51歳)に連絡。銀行からの引き出しをお願いしていた。

 古橋さんには、50代になる2人の子どもがいる。都心部と埼玉県に住んでいるが、兄弟は仲が悪く、母親にも冷淡で実家にも寄り付かなかった。

 4年前、古橋さんはこたつに足を引っ掛けて転倒。身動きがとれずにもがいていたとき、たまたま畠山さんが訪ねてきて病院に搬送してくれた。

 畠山さんが言う。

「古橋さんは、もう独り身の生活は危険だと思いました。それで区役所や区議会議員さんにお願いして、要介護4の指定を受け、地元の特養老人ホームに入居することになったのです」

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