ALK遺伝子転座には「クリゾチニブ」という分子標的薬があり、従来の抗がん剤治療に比べて、生存期間を2倍に延ばすという研究結果が出ている。これまでの“常識”がガラリと変わり、「効果の高い抗がん剤を選択し、十分投与することで生存期間が延長する可能性が高くなる」(山本教授)という。
もうひとつのトピックは、「免疫チェックポイント阻害剤」だ。体にはがん細胞を攻撃する免疫細胞があるが、この働きを止める“ブレーキ”を外す薬を使った治療である。現在、肺がんへの承認が待たれている状態だ。
「これまで免疫療法は、がんを特異的に攻撃する免疫細胞を活性化させる、もしくはそれらを増やすことに主眼が置かれていましたが、肺がんに対しては効果がありませんでした。それは、“免疫細胞の働きを止めるブレーキ”に原因があった可能性があります」
そのため、免疫チェックポイント阻害剤の効果は期待できる。実際、抗がん剤治療の後の再発肺がん患者に対して免疫チェックポイント阻害剤を使うと、生存期間が延びたことが報告されている。