医者も知らない医学の新常識

風邪に抗生物質を出す医者がヤブとは限らない

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 風邪の治療に抗生物質は必要でしょうか? この問いに最近のテレビや医療本などでは、「風邪に抗生物質を処方するのはヤブ医者だ」というような発言が見受けられます。

 風邪はほとんどがウイルスによる病気です。特に薬など飲まなくても、普通は自然に治る軽い病気です。それに対して、抗生物質は細菌感染の治療薬。その使用には意味がない、というのがその理屈です。

 この理屈自体は間違いではありません。しかし、実は風邪症状でも抗生物質を使用することにより、「症状の悪化が防げた」という研究結果もあります。

 今年のJAMAという一流の医学誌に載った論文がそうです。風邪をこじらせて、胸がゼーゼーして呼吸が苦しくなる気管支炎に繰り返しかかるお子さんでは、そうなる前の風邪症状の時に「アジスロマイシン」という抗生物質を5日間飲むと、飲まない場合より3割以上風邪の悪化が予防されたというのです。

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石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。