医師語る 「こんな病気で死にたい」

理想は自然死 飲まず、食わず、悔いず 眠るように

石飛幸三さん(C)日刊ゲンダイ
石飛幸三さん(特別養護老人ホーム・芦花ホーム常勤医)

「苦しみたくないから最期は“ピンピンコロリ”がいい」――。こう言う人がいます。

 寝たきりで家族に迷惑をかけたくない、という気持ちからでしょうが、私は賛成できません。

「ピンピンコロリ」は突然死です。大切な人に別れの言葉を残さず、心の準備をさせないまま去っていくのは無責任です。残された妻や子供が父親の遺体にしがみつき、泣き叫ぶ姿を幾度となく見てきた私には、とても身勝手に感じます。

 ならば、がんはどうでしょう?

「死ぬのはがんに限る」と言う医師もいます。がんはおおよその余命が予測できます。「死ぬまでにやっておきたいことに費やす時間が持てる」という意味では、悪くはありません。しかし、転移する恐怖やがんの痛みを考えると、全面的に賛成はできません。

 駆け出しの医師だった頃、苦しみながら亡くなった胃がんの患者さんを見ました。そのため、がんで死ぬのはどうかと思います。

1 / 5 ページ