医師語る 「こんな病気で死にたい」

理想は自然死 飲まず、食わず、悔いず 眠るように

石飛幸三さん(C)日刊ゲンダイ

 そのまま息を引き取る人もいますが、突然「ハアーッ」と息を吐き出す動きを見せる方もいます。これは呼吸筋の最後の反射反応にすぎません。

 こうしたことは、親や近親者の死に立ち会っていれば分かることです。人の死を病院任せにして、学ばないから、「苦しそうだから、モルヒネを使ってください」といった発想になるのです。

 私は、いま勤めている特別養護老人ホームで200人以上をみとりましたが、モルヒネを使ったことはありません。皆、眠るようにして亡くなるので、使う必要がないからです。

 大切なのは本人が「十分生きた」「やり切った」と思える気持ちになることです。先に亡くなった家族や知人との死後の再会を考え、死を前向きに受け入れる準備も大切です。

 死を前にした患者が病院や医師に期待していいのは、「いつまで自由に動けて、自分の意思を伝えられるのはいつまでか」という見通しです。患者さんは、死を医師や病院に委ねることなく、残された人生の幕引きをどう使うか、自分で決めるべきです。

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