天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

花粉症で呼吸しづらくなると心臓の負担が増大する

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 しかし、生体リズムが乱れたり、ストレスがかかって自律神経のバランスが崩れてしまうと、興奮状態が続き、心臓にかかる負担が大きくなります。花粉症の症状によって、心臓が影響を受けるのです。

 さらに、花粉症の治療で使われる薬も心臓疾患にとって大敵です。花粉症の薬の多くは、交感神経を刺激する成分が含まれています。交感神経を刺激して鼻の毛細血管を収縮させ、鼻汁の分泌や充血を抑えるのです。しかし、常用すると鼻の毛細血管だけでなく、全身の血管も収縮させるため、結果として血圧の上昇を招きます。花粉症の薬の多くが、心臓病や高血圧の患者さんは使用できないとしているのはそのためです。

「抗ヒスタミン薬」にも注意が必要です。鼻汁やくしゃみなどのアレルギー症状の原因となるヒスタミンに作用して症状を抑える薬ですが、他の薬との飲み合わせによる相互作用から、重度の不整脈で死亡する事例が起こりました。現在は、副作用が少ないとされる抗ヒスタミン薬が販売されていますが、不整脈の副作用報告はゼロではありません。心臓疾患を抱えている人は、特に注意してください。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。