Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

予備軍も死亡率上昇 糖尿病でがんの人は大学病院がベスト

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 がんと向き合う上でも糖尿病がよくないことが分かるでしょう。よくないのは、がんの治療についてもいえます。

 1つは、血糖コントロールが悪いと、手術ができません。術後の傷が治りにくく感染症や合併症を起こすリスクが高いのです。

 もう1つは、放射線治療の副作用の増加。乳がんや大腸がん、前立腺がんなどでは、糖尿病の人が放射線治療を受けると、副作用の発生頻度が上昇。死亡率が上がるという報告もあります。

 このような事情から、空腹時血糖値が200mg/dl以上やHbA1cが10%以上だと、がん治療の前に十分血糖値を下げることが大切。つまり、糖尿病の人ががんになったら、目的はがんの治療ですが、糖尿病専門医のサポートが欠かせないのです。

 がんの治療は、80カ所の大学病院、国立がん研究センターに代表される全国32カ所のがんセンター、さらに県立病院などを含む約400のがん診療拠点病院で受けられます。中でも、がんを専門に治療するのが、がんセンターですが、糖尿病専門医など、がん以外の専門医の数が限られるのが弱点のひとつです。

2 / 3 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。