人は遺伝子の奴隷なのか

ロマノフ王朝を崩壊させた血友病とミトコンドリアDNA

ニコライ2世とその家族(C)Sputnik/共同通信イメージズ

「その後、革命派により侍従と医師と一家7人は銃殺され、誰かとわからないよう遺体の顔は硫酸で焼かれたのです」

 遺体はバラバラに埋められ、それ以降、遺体は見つからず、「皇女らは生きている」との噂が流れた。イングリッド・バーグマン主演の映画「追想」やアニメ映画「アナスタシア」も、この事件をヒントに作られた。

 やがて遺体が見つかり、遺骨の身元の割り出しが行われる。その方法は各人のDNAの配列の違いを調べること。特に重要なのは、ミトコンドリアDNA解析による母系解析だった。

「ミトコンドリアは、酸素呼吸でエネルギーをつくる細胞小器官です。そのDNAは核内のDNAより変化が起きやすいため、塩基配列の個人差が大きくなります。それだけ個人の特定がしやすいのです。しかも、ミトコンドリアDNAは卵子の細胞質により子孫に伝えられることから、どの母親から生まれた子孫なのか、母親の系譜を調べられるのです」

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