意外に知らないホルモンの実力

【オキシトシン】自閉症の治療薬として試される絆ホルモン

写真はイメージ)(C)日刊ゲンダイ

 2005年に行われた海外の研究では、オキシトシンをかいだ被検者たちが「信頼ゲーム」で投資家役をより信頼しやすくなることが明らかになった。「信頼ホルモン」でもあるのだ。

「人は恋をすると好きな異性を獲得するためにドーパミンの分泌が高まり、一生懸命にアピールします。そして、2人が結ばれ肌が触れ合い、子供ができると、今度はオキシトシンが強く働いて一体感をもった家族愛が生まれる。ですから『絆ホルモン』や『浮気防止ホルモン』とも呼ばれるのです」

 ところが結婚生活が長くなり子供も成長すると、夫婦間の愛情が薄れていくという話はよく聞く。その場合、夫婦間のスキンシップがないことを指摘する研究者が少なくない。オキシトシンは、スキンシップだけでなく、ペットと触れ合うことでも分泌が高まるという。

 オキシトシンの研究が遅れていたのは、分泌の過不足があまり病気と関係しないからだ。国内では陣痛誘発や分娩促進などに注射剤のみが保険適用になっている。

「最近、発達障害の一種の『自閉スペクトラム症』の対人コミュニケーション障害に、オキシトシンの経鼻スプレーを使うと協調性が改善されることが報告されました。いま日本で、医師主導で治験が進められています」

 オキシトシンには、まだ秘めた力がありそうだ。

2 / 2 ページ

関連記事