遺伝子治療薬はここまで来ている

ウイルスは人類の脅威である一方医療の発展にも役立っている

「ダイヤモンド・プリンセス」号の周辺で、防護服を身に着け作業にのぞむ関係者(C)日刊ゲンダイ

 多くの人は「ウイルス」と聞いただけで悪いイメージを持ってしまうかもしれませんが、最新の薬の中にはウイルスを用いたものが開発されていて、人類の役にも立っています。脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する新しい遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」は、治療の主役となる遺伝子(SMN1遺伝子をコードしたDNA)を目標とした細胞に送るための輸送媒体(ベクター)として、アデノ随伴ウイルスというウイルスが用いられています。これは、ウイルス自体の遺伝子を取り除いて病原性をなくし、代わりの治療に必要な遺伝子を入れ込むことで、ウイルスの感染力(遺伝子を細胞に到達させる力)をうまく遺伝子送達に生かしたもので、遺伝子の導入方法としては古くから用いられている手法です。

 このように、ウイルスは人類の脅威でもある一方で、医療の発展にも一役買っているのです。

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神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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