痛みのない暮らしを取り戻す

ペインクリニックは痛み緩和に加え生活の質を上げる治療を行う

意外と多い「記憶による痛み」

 硬膜外ブロックとは、脊椎(背骨)を覆う膜である硬膜の外側に、局所麻酔薬の注入で痛みを緩和する処置です。血管の内径を2倍に拡大することで、8倍の血流量を流せます。これにより、痛みの悪習慣である発痛物質の大掃除ができ、痛みがなくなるのです。感覚神経だけを鈍らせて運動神経は鈍らせないので、外来で処置を受けられます。

 痛みの中には「記憶による痛み」というものがあるのですが、実はこれが意外と多く、私は痛みに悩まされている患者さんの約9割は記憶による痛みが原因だとみています。硬膜外ブロックは「痛みの記憶」の書き換えができるのです。

 Sさんは、1カ月に1回程度の硬膜外ブロックを7回ほど行った後、痛みに悩まされることがなくなり、今では元気にお仕事に復帰されています。

 このように、ペインクリニックは、痛みをとるという処置だけのようですが、実は患者さんのQOL(生活の質)を上げる治療なのです。ただ、局所麻酔とはいえ、鎮痛剤を使用するため、専門医の熟練した技術が必要です。

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西本真司

西本真司

医師になって34年。手術室麻酔、日赤での緊急麻酔、集中治療室、疼痛外来経験後、1996年6月から麻酔科、内科のクリニックの院長に。これまでに約5万8000回のブロックを安全に施術。自身も潰瘍性大腸炎の激痛を治療で和らげた経験があり、痛み治療の重要性を実感している。

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