硬膜外ブロックとは、脊椎(背骨)を覆う膜である硬膜の外側に、局所麻酔薬の注入で痛みを緩和する処置です。血管の内径を2倍に拡大することで、8倍の血流量を流せます。これにより、痛みの悪習慣である発痛物質の大掃除ができ、痛みがなくなるのです。感覚神経だけを鈍らせて運動神経は鈍らせないので、外来で処置を受けられます。
痛みの中には「記憶による痛み」というものがあるのですが、実はこれが意外と多く、私は痛みに悩まされている患者さんの約9割は記憶による痛みが原因だとみています。硬膜外ブロックは「痛みの記憶」の書き換えができるのです。
Sさんは、1カ月に1回程度の硬膜外ブロックを7回ほど行った後、痛みに悩まされることがなくなり、今では元気にお仕事に復帰されています。
このように、ペインクリニックは、痛みをとるという処置だけのようですが、実は患者さんのQOL(生活の質)を上げる治療なのです。ただ、局所麻酔とはいえ、鎮痛剤を使用するため、専門医の熟練した技術が必要です。
痛みのない暮らしを取り戻す