Dr.中川 がんサバイバーの知恵

直腸がんで手術6回の坂本龍一さんを深掘り「一がん息災」の重要性

坂本龍一(C)日刊ゲンダイ

 そう考えると、NYの病院が最初に化学放射線療法を選択したのは、手術に向けた補助的な治療ではないでしょうか。つまり、最初の治療で腫瘍を小さく、かつ少なくしてから手術するシナリオだったのでしょう。逆にいうと、診断時にそれだけ進行していたと思われます。

 結局、21年1月に直腸の原発巣、肝臓とリンパ節の転移巣を切除。さらに両肺の転移巣などを含め、6回の手術を受けたといいます。

 直腸がんの診断は、中咽頭がんが発覚してから6年後。その中咽頭がんは放射線治療で寛解したのは周知の通りですが、がんの治療は寛解後も数カ月おきに検査をして、再発の有無をチェックするのが一般的です。

 検査を受けていなかったのでしょうか。もう一つ気になるのが、この一節です。

「40歳を過ぎる頃までは健康のことなんて一切考えず、野獣のような生活をしてきました(中略)西洋医療の薬を日常的に飲み始めたのは、60代で最初のガンが発覚してからです」

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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