医者も知らない医学の新常識

血液中の「鉄分」が心機能を妨げる 心筋梗塞に新たな知見

写真はイメージ(提供写真)

 心筋梗塞というのは、心臓を栄養する血管が、動脈硬化などの影響で詰まって、血液が心臓の筋肉に流れなくなる病気です。大事な血管が詰まって血液の流れない状態が続けば、命に関わる危険があります。それでも今では医療の進歩により、早期にカテーテルを使った治療を行えば、詰まった血管の血流を高い確率で再開することが可能になりました。しかし、患者さんによっては、一度途絶えた心臓の筋肉への血流を再開しても、心臓の働きは元に戻らないばかりか、その後も低下して心不全になることがあるのです。

 なぜ一部の患者さんで、こうした現象が起こるのでしょうか? 今年のネイチャー系の科学誌に、動物実験による興味深い研究結果が報告されています。それによると、心筋梗塞に伴って、心臓の筋肉への血流が止まってしまった時、そこに出血が起こると、沈着した血液の中の鉄分が心機能の回復を邪魔してしまうことが分かったのです。心臓の細胞は沈着した鉄分を外にうまく出すことができないので、そこに慢性の炎症が起こり、それが続くことで心臓の働きが低下してしまうのです。

 これは動物実験のデータなので、人間でも同じことが起こっているかどうかはまだ分かりませんが、今後、医療の進歩により、たまった鉄分を外に出すことができれば、心不全を予防することが可能になるかもしれません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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