感染症別 正しいクスリの使い方

【細菌性髄膜炎】免疫を抑制するステロイドを感染症に使うケースも

細菌性髄膜炎を疑われた時点で直ちに治療を開始(C)日刊ゲンダイ

 成人の細菌性髄膜炎の原因菌は肺炎球菌が最も高頻度で、50歳以上では約80%を占めるともいわれています。若年者ではインフルエンザ菌、乳児では大腸菌などもみられます。症状は、発熱、頭痛、首の硬直、吐き気、嘔吐などが現れます。

 背中に針を刺して脳脊髄液を採取し、中に細菌がいるかどうかを調べる検査(腰椎穿刺)を行って診断しますが、細菌性髄膜炎は命に関わる感染症なので、疑われた時点で直ちに治療を開始します。抗菌薬とステロイド薬の点滴投与で、抗菌薬は高用量の使用が必要です。

 髄膜炎の予防にはワクチンが広く知られています。乳幼児には、インフルエンザ菌に対するヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの2つのワクチンの接種が有効です。 肺炎球菌ワクチンは65歳以上における肺炎球菌感染による髄膜炎と菌血症の予防においても非常に有効で、肺炎球菌による髄膜炎と菌血症を合わせた重症感染症の発症率を、ワクチン未接種の場合と比較して74%減少させたという結果もあります。

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荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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