一方、iPS細胞を中心とした再生医療は、ひとつしかない心臓を他から提供してもらって入れ替えるのではなく、自身の臓器を“蘇らせる”という発想です。これは医学の進歩の過程の中にある、しごくまっとうな道といえます。iPS移植初期には免疫抑制剤を使用しますが、患者さん自身の心筋が蘇った後は不要になるとされていますし、その後の拒否反応も起こる可能性は極めて低いと考えられています。治療が広まって軌道に乗れば、治療費もそこまで高額にはならないとみられています。
心臓の機能が低下すると他の重要臓器の機能も不全状態に陥る多臓器不全となり、そうなってからでは再生医療や移植医療は意味を持ちません。救える命を救うためには、臨床応用に入ったiPS細胞を中心とした再生医療を慢性心不全の患者さんに早期導入していく必要があります。そのためにも、政府は再生医療の研究と発展のために集中投資するべき時期に来たと言えるのではないでしょうか。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」