Dr.中川 がんサバイバーの知恵

“ぴんぴんコロリ”とがんで死にたい 専門医の私も実感している

故・樹木希林さん(C)日刊ゲンダイ

 心臓病や呼吸器疾患の多くは、病状の急変を繰り返しながら、少しずつ機能が低下。急変のたびにつらい思いを余儀なくされて死に至ります。認知症や老衰は、元々低い機能がさらにゆっくりと低下しながら絶命に。脳卒中で後遺症があるようなケースも、認知症と同じような下降曲線をたどって亡くなります。

 その点、がんは比較的長い間体の機能が保たれていて、急速に悪化するのは最後の数週間です。ここに紹介した方々のように数日前まで家族や仲間と意思の疎通ができることは決して珍しくありません。アップルの創業者スティーブ・ジョブズも、膵臓(すいぞう)がんで56歳で命を落とす数日前まで仕事をしていたといいます。ぴんぴんコロリとがんで死にたい。これが、がん専門医である私の希望です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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