医療だけでは幸せになれない

選択バイアス、情報バイアス、交絡因子…コントロールできるバイアスと、できないもの

写真はイメージ(C)PIXTA

 3つ目の「交絡因子」であるが、これは医療の効果を評価する際の最大のバイアスと言ってもいいものである。

 マスクの効果の研究を例に言えば、マスクをつけている人の平均年齢が70歳で、つけていない人が50歳であれば、当然前者でコロナ重症者が多く発生するリスクが高く、マスクの効果を過小評価する方向に結果をゆがめる。この際、後者で重症者が少ないという結果は、マスクの効果というより、年齢が交絡したためにゆがめられているというわけである。

 この交絡因子は、ただマスクをしている人、していない人を比べるだけでは避けることができない。さらには、この交絡因子を意図的に利用すれば、マスクに効果なしという結果も、効果ありという結果もどちらも容易に生み出せる。事実そうした研究は多くある。

■バイアスを避けた研究は難しい

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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