高齢者の正しいクスリとの付き合い方

病気の治療に普段から使われている劇薬や毒薬はたくさんある

「劇薬」「毒薬」は意外と身近

 この条件以外にも、治療に用いられる量と中毒を起こす量が接近しているクスリ、治療に用いられる量であっても副作用が出る可能性が高いクスリ、副作用の程度が重篤なクスリなどが劇薬、毒薬に分類されるケースもあります。

 冒頭で触れたように、こういった劇薬、毒薬は疾患の治療で実際に広く使われています。降圧薬で紹介したカルシウム拮抗薬と呼ばれるクスリの多くは劇薬に分類されますし、がんの治療に用いられる抗がん薬の多くは毒薬に分類されます。他にもたくさんのクスリが該当します。

 だからといって、これらが危険かというと必ずしもそうではありません。LD50を絶対に超えないようにきちんと安全な投与量が決められていますし、劇薬や毒薬が用いられる場合には薬剤師はもちろんすべての医療従事者がそのリスクを十分に考えて副作用が出ていないかをモニタリングしています。

2 / 3 ページ

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

関連記事