がんと向き合い生きていく

暑い夏になると高校時代の熱血先生を思い出す やかんを手に巡回

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 松木先生は授業中にだんだん感極まってくると、歌い出します。

「時計の針の絶え間なく、めぐるがごとく励みなば、……いかなるわざがならざらん……」

 そしてよく話す、口癖のような言葉があります。

「実践です。プラグマティズムです」

 まさに熱血先生です。

■受験票を神棚に積んで合格祈願

 この怖い怖い授業なのに、ある時、授業が始まる前、生徒が教室の入り口の引き戸の上にチョークまみれの黒板消しを挟みました。先生が引き戸を開けて入ると、黒板消しが先生の頭に落ちてくる仕掛けです。固唾をのんで見守っていると、黒板消しは頭に落ちず、松木先生の目の前に落ちました。その瞬間、松木先生は黒板消しを足で蹴り、先生用の椅子も蹴り飛ばしてから授業が始まりました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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