採点された答案用紙が渡される時もとても怖く、結果が悪いと「スコンク!」(完敗の意)という大きな声が隣の教室にまで響きます。
大学受験の直前になると、先生は職員室の前で神棚に受験票を山のように積んで、合格祈願をしてくれました。私が合格したことを職員室で告げると、松木先生は「よくやった、よくやった」と喜んでくれました。
松木先生は、私たちが卒業後、数年たってある高校の校長に栄転されました。後日、全校生徒の前で行った、その時のご挨拶を録音したテープを聞きました。
「長年、勤めさせていただいたこの東高を去ることになりました……寂寥感に堪えません。ここで、おまえたちに言っておかなければならないことは、おまえたちの実行力、プラグマティズム、これが欠けていることです。これは、寝ても覚めても私の頭から離れません……。それでは行ってまいります」
山形東高校では遠方への修学旅行はなく、1年に1回、近場の遠足がありました。その年は、生徒の希望で松木先生が校長に赴任した高校が目的地となったそうです。その遠足で、松木先生はお菓子の袋をたくさん用意して待っていた……そう、人づてに聞きました。
がんと向き合い生きていく