がんと向き合い生きていく

暑い夏になると高校時代の熱血先生を思い出す やかんを手に巡回

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 山形東高校の同窓会がある時は、この名物教頭だった松木先生が必ず話題になります。高校受験の合格発表があってすぐ、入学前に全員が高校に呼び出され、皆に英語の小冊子が渡されました。50ページほどの、確か「ロビンソン・クルーソー」だったと思います。

 松木先生は、怖い顔で「この本を読んでくるように。入学式の翌週にこの中から試験を行います」と告げました。入学式までの日々がもったいないと言われるのです。受験から解放され、遊びたかった私は愕然として帰宅しました。

 入学式が終わって、松木先生の英語の授業が始まりました。

「口が回らないではないか!」

「大切な文は書き残すから、黒板に書いたものをノートに書き写すのは休み時間にしろ」

 今であれば、生徒から訴えられかねないような怒声が隣の教室まで響きます。怖くて、数日、学校を休んだ生徒もいたようでした。松木先生の授業で、その直前の休み時間から緊張したのは、私だけではなかったはずです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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