独白 愉快な“病人”たち

子宮内膜症で手術を選んだフリーアナの宮島咲良さん「ロケ中に大激痛に襲われて…」

フリーアナウンサーの宮島咲良さん(提供写真)
宮島咲良さん(フリーアナウンサー/39歳)=子宮内膜症

「子宮内膜症」のひとつ「チョコレート嚢胞」の治療で、腹腔鏡下卵巣嚢腫摘出手術を受けたのは、2021年3月初旬でした。今は、生理痛がないことはこんなに楽なのか! と、人生が百八十度変わるくらい毎月の不安から解放されて幸せいっぱいです。

 初潮からすでに生理痛が重かった私は、毎月痛み止めを飲んでいました。「生理は痛いのが当たり前」という認識で、それを疑うことなく30歳過ぎまで生きていたのです。

 そんな生理痛が少し変わったと感じたのは18年8月ごろ。今から思えば、それが子宮内膜症による痛みだったのだと思います。普通は下腹部に来る生理痛が、胃や腸の辺りにもあったのです。今まで感じたことのないひどい痛みではあったものの、長年の痛みの経験から「ま、こんな月もあるのだろう」と自分の中で処理してしまい、病院へ行くことはありませんでした。

 でも、その2~3カ月後の生理のときに大激痛に襲われたのです。忘れもしないスポーツ番組のロケ中でした。直前まで普通だったのに、突然、首から下腹部までの内臓をぐちゃぐちゃにかき混ぜられてギューッと引っ張られているような激しい痛みが一瞬で広がって、立っていられなくなりました。発熱もしていて、痛さで意識も飛びかけていました。

 ロケ中でなければ救急車を呼んでいたと思います。でもゲストの方もいらしたので、何としてでもやり切らねばと思い、1時間休憩をいただいて、本来はダメですけどロキソニンを多めに飲んで、ベンチで横になりました。ほんの少し痛みが引いたところで「大丈夫です!」と言ってロケを続行。やり投げしまくりました。どうかしていますよね(笑)。

 そんな痛みがあったのに、翌日も生放送のレギュラー番組があったので病院に行く時間がなく、結局、かかりつけ医を受診したのは1週間以上たってからでした。病院を紹介され、検査した結果、「子宮内膜症で両卵巣にチョコレート嚢胞ができている。片方が破裂して少し中身が出ている」との診断でした。

 子宮内膜症は、本来は子宮の内側にある内膜がほかの場所にできてしまう病気です。私の場合は卵巣内にできてしまい、血がたまってチョコレート嚢胞となって卵巣が肥大していました。

 ただ、緊急を要する大きさではなかったので経過観察になりました。それから1~2年して、「そろそろ手術を」という話になった頃には、まとまった休みが取れない状況で、そうこうしていたらコロナ禍に突入してしまいました。「こんなときに手術は怖い」と、さらに先延ばしにしていたら、2度目の大激痛と発熱に見舞われたのです。 いよいよ手術かと思ったその頃、入れ替わった新しい主治医から「一度、子宮内膜症の薬を飲んでみましょう」と言われました。

 ジエノゲストという薬で生理をコントロールすることで、肥大した卵巣が小さくなる可能性があるというのです。「小さくなれば手術しなくて済む。それなら」と半年間、薬を飲み続けました。

 でも私には効果がなかったため、腹腔鏡でチョコレート嚢胞を切除する手術を決断しました。嚢胞を取り切るために卵巣の健康な組織も削り取らなければならなくて、妊娠しにくくなるリスクはあると聞きましたが、未婚ですし、恋人もいませんし、何が何でも子供が欲しいというわけでもなかったので、意外とスッと決断したと思います。 入院は6日間。レギュラーの仕事は1回休んだだけでした。でも、手術後はとんでもなく痛かったので、「絶対に予定通り退院できるわけがない」と思いました。それなのに翌日には「歩いて」と言われるし、思いの外つらかったです。退院の前日になっても、「明日退院なんて無理!」と思っていました。しゃがむことが絶対不可能だったんですから。

 ところが、その日の深夜に急にしゃがめたんです。そしてめでたく退院。といっても、103歳ぐらいの方の腰の角度と歩行スピードでしたけどね(笑)。

 その後は順調で、腹腔鏡の傷痕もかなり薄くなりました。ただ、内膜症は再発しやすいので、再発防止のためにジエノゲストを今も飲み続けています。

■不調を感じたら婦人科に行ってほしい

 若いうちはあまり病気を意識しないと思いますけど、子宮内膜症はとても身近で知らないうちになってしまう病気です。私も大激痛の数年前から排便痛がありましたが、食生活のせいかなと勝手に思ってスルーしました。でも、じつは腸と肥大した卵巣が癒着して便が通るたびに引っ張られて痛みを発していたことが手術後にわかったんです。

 本来、生理は痛くないものなんですって。だから生理痛ぐらいで……と思わず、ちょっとでも不調を感じたら婦人科に行ってほしい。先生に話を聞いてもらいに行くくらいの気軽さでいいと思うんです。

 そのためには、フィーリングの合う先生に巡り合うまで、いろんな先生に診ていただくことも大事。私も何度も病院を変えました。

 私の経験を伝えることで婦人科がもっと身近になればいいなと思っています。

(聞き手=松永詠美子)

▽宮島咲良(みやじま・さくら)1983年、東京都出身。大学卒業後、2007年にアナウンサーとして九州朝日放送に入社。10年にフリーアナウンサーとなる。舞台をはじめ、テレビアニメのテーマ曲で歌手デビューをするなど幅広く活躍し、BS番組やラジオでレギュラー多数。戦隊もののイベント司会もこなす。9月7~9日、朗読劇「胡蝶の手紙~Letter of Butterfly」(TOKYO FMホール)では座長を務める。



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