医者も知らない医学の新常識

「胃薬」が認知症のリスクになる? 神経医学の専門誌で報告

「胃薬」の使用は必要最小限に

 いくつかの「薬」は認知症のリスクになることが知られています。代表的なものは、抗コリン剤といって、自律神経の働きを弱める作用の薬です。また、睡眠薬や安定剤も、その使い過ぎが認知症のリスクになる可能性があります。

 こうした薬はその仕組みから、脳の働きを弱めることが推測出来るのですが、一見無関係の薬でも、その長期使用が認知症のリスクになる可能性が指摘されている薬剤があります。そのひとつが「プロトンポンプ阻害剤」と呼ばれる胃薬です。

 プロトンポンプ阻害剤は強力に胃酸を抑える作用があり、胃潰瘍や逆流性食道炎などの治療に使われています。しかし、体に必要な栄養素の吸収も抑えてしまうような弊害もあり、最近、その健康影響を指摘する声があります。その影響のひとつとして指摘されているのが、認知症リスクの増加です。

 今年の神経医学の専門誌に掲載された論文では、高齢者に継続して使用した場合のプロトンポンプ阻害剤の認知症リスクが検証されています。平均年齢が75歳の高齢者5700人以上を長期間観察したところ、プロトンポンプ阻害剤の短期の使用では認知症のリスクの増加はありませんでしたが、累積で4.4年以上使用していると、認知症リスクが約30%増加することが確認されました。強い胃薬の使用は、必要最小限にとどめることが必要であるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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