医者も知らない医学の新常識

食事はどのくらい認知症予防に有効か? 世界的医学誌で報告

食生活を改善することで認知症の予防が可能に

 認知症の新薬が最近ニュースになっています。たしかに早期に使用すると、これまでの薬では得られないような効果が期待されるのですが、それでも進行を遅らせることが主な効果で、認知症自体が治る、というわけではありません。認知症は予防が第一、という考え方は変わっていないのです。

 食生活を健康的に改善することで、認知症は予防可能だといわれることがあります。「MIND食」と呼ばれる食事はその代表的なもので、認知症予防のために開発された食事です。その内容は、オリーブオイルや魚、豆類や雑穀など、認知症予防に良いとされる食品を増やし、赤身肉やお菓子など、悪いとされる食品を減らすというものです。

 このような食事を継続することで、実際にどの程度の効果があるのでしょうか? 今年の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」という一流の医学誌に、アメリカの2カ所の専門施設において、この食事を行った場合と、単純に軽度のカロリー制限のみを行った場合とで、3年間の経過を比較した臨床研究結果が発表されました。対象は65歳以上で太り気味の604人の高齢者です。その結果、認知症の予防にとっては、MIND食も普通のカロリー制限食も、大きな違いはありませんでした。

 食べ過ぎや不摂生はもちろん認知症のリスクになりますが、特定の食事が確実に予防につながる、という根拠も、今のところ確かなものはないようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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