Dr.中川 がんサバイバーの知恵

だいたひかるの義父も…「アブスコパル効果」で膀胱がん転移巣が消える可能性

膀胱がんは再発しやすいため、治療後の定期検査が重要(C)PIXTA

 その状況を変えたのが免疫チェックポイント阻害剤で、膀胱がんで最初に使われたのがキイトルーダで、2番目がバベンチオです。がん細胞は特殊なタンパク質を出し、免疫細胞の攻撃を免れる仕組みがありますが、免疫チェックポイント阻害剤はその“防御網”を解除して、がん細胞への攻撃を届きやすくしています。

 バベンチオは腫瘍が縮小したり、進行が止まったりしているうちに使用し、治験での生存期間は約21カ月。抗がん剤や放射線など積極的な治療をせず緩和ケアなどにとどめるグループの14カ月より優れているものの、心もとない現状でした。

 そんな中、注目を集めているのが、免疫チェックポイント阻害剤と放射線の組み合わせです。先ほどがん細胞の免疫ブロックの仕組みについて触れましたが、放射線照射でもそのブロックを破って、免疫がしっかりと機能する可能性があることが分かっていて、原発巣への放射線照射後に転移巣の病巣も縮小することがあるのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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