独白 愉快な“病人”たち

血管のことばかり考えていた…歌手の鈴木花純さん下肢静脈瘤の手術を振り返る

歌手の鈴木花純さん(C)日刊ゲンダイ
鈴木花純さん(歌手/28歳)=下肢静脈瘤

「下肢静脈瘤」は、静脈弁(血液を脚から心臓へ戻すための逆流防止弁)の働きが悪くなり、血液が滞り血管が太くなって瘤状に浮き出てしまう病気です。命に関わることはありませんが、長年放置すると皮膚がボロボロになって、瘤が破れて出血することもあるようです。

 私が血管の瘤を気にし始めたのは高校2年生、17歳のときです。ある日、左脚の膝裏の少し上あたりにミミズのように膨らんだ青い血管が見えてギョッとしました。長さは6~7センチ。「これは何だ?」と思いました。スカートでも、ルーズソックスでも隠しにくい絶妙な場所にあって、本当に憂鬱になりました。

 でも、病気だとはまったく思わなくて、親に報告することもありませんでした。ただ、友人から「何かついているよ」と言われることが本当にイヤで、完全にコンプレックスになっていました。友人と歩くときは一番後ろを歩いたり、体育などで脚を出さなければいけないときはばんそうこうを貼ったり……。大げさではなく、毎日、血管のことばかり考えていたのです。

 芸能界デビューも17歳だったので、いよいよ放っておけなくなり、「血管 脚の裏側 浮き出ている」というワードで検索してみました。すると「下肢静脈瘤」が出てきて「コレかも?」と思い、母親にも伝えて病院に行きました。

 病院では20万~30万円かかる手術を勧められました。高額な上、当時は保険がきかない手術だったので、すぐに断念したのですが、医師から「別の方法があるよ」と注射を勧められました。1年間だけ瘤を消すことができるというもので、1回1万円でした。それなら支払えるので、その注射をお願いしたんです。

 実際に瘤は消えていったので、「年に1回これを打とう」と思っていました。でも結局、それきり血管が浮き出ることはなくなりました。「よかった」と安心しました。

歌手の鈴木花純さん(C)日刊ゲンダイ
諦めていた手術を今年5月に決断

 ただ、年齢を重ねるごとに疲れが脚に出るようになり、今年に入った頃にはもう自宅を出てライブ会場に行くだけで脚がむくみ、重くて仕方がないようになりました。かゆみもあったので、また下肢静脈瘤かもしれないと感じて病院を受診すると、案の定、「血管がかなり拡張している。放置しても良くなることはない」と言われました。

 かつては高額で諦めた手術も今は保険適用になっていると聞き、今年の5月に手術を受けました。膝からカテーテルを入れてダメになった血管を内側から焼いて潰すという全身麻酔の手術でした。そうすると、自然に新しい血管ができるらしいのです。

 時間にして約15分。後半はおぼろげに意識がありました。日帰り手術なので、左脚だけ包帯グルグル巻きの状態で帰宅し、翌日にはレギュラーのラジオ番組に出演しました。術後、医師からは「明日には包帯は外してガーゼでいいし、歩いていいよ。軽い運動もOK」と言われたので安心していました。

 ですが、実際は現場に向かう途中で「本当に歩いていいのかな?」と疑うほどの痛みに襲われました。歩く振動による痛みです。脚を引きずりながら現場に着いたときには、脚が脚でないような感覚でした。サポーターをするといくらか楽になると聞いたので、1カ月くらいはステージでもサポーターをしてパフォーマンスしました。ただ、しゃがむことができないので、振り付けを変更したりしてメンバーにも迷惑をかけました。

 見た目が片手を広げたくらいの大きさで赤黒くなっていて、かなりグロテスクでした。3~4カ月たって、今やっと目立たなくなった感じです。

 自分はずっとむくみやすい体質だと思っていました。だからミミズのように血管が浮き出たときも体質の類いだと思っていたのです。でも手術したことで本当に脚が軽くなったので、10代のときに保険がきく手術だったらよかったのになあって思いました。

 原因は、遺伝だったのかもしれません。じつは10代で病院に行ったときに、母や祖母にも下肢静脈瘤があることを聞きました。目立たない場所にあったのでまったく知らなかったのですが、見たら本当にボコボコ血管が浮き出ていました。保険がきかない時代だったので放置してきたのでしょう。今さら手術は考えていないようでした。

 でも、私がこの件をSNSで発信したら、「SNSを読んで私も病院に行きました」という若い人の反応があったんです。アイドルの中でも同じような症状で悩んでいる人が意外といて、私の経験が病院を受診するきっかけになったようです。

 私もそうでしたが、若い女の子は血管がボコボコ出ていることがコンプレックスになると思うんです。それまでSNSで自分のことを発信するタイプではなかったんですけれど、このことがあって、発信することも大事だなと思うようになりました。

 病院を受診することは面倒なことです。よほどのことがないと行かない人が大半だと思います。でも、少しの不調でも行った方がいいなと思います。あまり人に言えないことは特にそう。私は手術して本当に良かったと思っています。

 (聞き手=松永詠美子)

▽鈴木花純(すずき・かすみ) 1995年、東京都出身。2015年に2人組ユニット「テレジア」として歌手デビュー。翌年にソロ活動を始め、19年には1stシングル「花のテレジア」をリリース。22年からはソロ活動と並行して3人組アイドル「ばっぷる」のメンバーとして活動している。現在、FM・NACK5で「鈴木花純のハッピータイムハッピーソング」(土曜深夜)がレギュラー放送中。



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