正解のリハビリ、最善の介護

「食べる」リハビリはどのように進められる? まずは「のみ込む=嚥下」能力の検査から

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(本人提供)

 全身の状態が衰えている患者さんの回復期リハビリでは、まず「座る」「立つ」「歩く」「コミュニケートする」が極めて重要で、リハビリの第一歩になると前回お話ししました。それらと同じく、自分の口から「食べる」ことをできるようにするのもとても大切です。

 ねりま健育会病院には、重度の嚥下障害や長く寝たきりを続けられるなどで食事はチューブで栄養を送る「経鼻経管栄養」という状態で入院される患者さんも少なくありません。そうした患者さんが来院されたとき、私はまず口の中を目で見て確認します。口の中がどれくらい汚れているか、唾液があふれているかどうかなどを診るのです。

 たとえば、長く自分の口から食事をしていない状況で、口の中に唾液があふれていないとなると、唾液はどこかに流れているはずです。われわれの口腔内では1日に約1.5リットルの唾液が分泌されています。その分の唾液がどこに流れていったのかを考えます。実は、口に唾液がたまってない患者さんは唾液をのみ込めているのです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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