正解のリハビリ、最善の介護

リハビリが必要になるのはどのような状況なのか?

「ねりま健育会病院」院長の酒向正春氏(本人提供)

「リハビリテーション医療」とは、介助が必要になるくらい落ちてしまった「機能」と「能力」を回復させ、日常生活や生産活動の自立(あるいは介助の軽減)を図り、新しい人生に歩む意欲を高めて幸せを感じていただく医療です。

 人間の機能と能力が落ちてしまう原因はいくつもありますが、そのひとつが「病気」や「ケガ」です。たとえば、脳卒中が起こって脳のどこかが壊れると、さまざまな機能障害が現れます。麻痺が生じて手足が動かなくなる、顔が動かなくなる、話せなくなる、食べられなくなる、目が見えなくなる、耳が聞こえなくなる、自分の手足がどこにあるかわからなくなる。記憶ができなくなる、注意力がなくなる、今日がいつなのかわからなくなる、間違いを修正できなくなる、間違いに気づかなくなる、危険なのかどうかわからなくなる……こうした障害は「高次脳機能障害」と呼ばれます。

 機能障害が残ると、さらに「能力」が落ちていきます。たとえば、歩く、物を拾う、食事をとる、排泄する、衣服を着脱する、顔を洗う、入浴する、清潔を保つ……といったわれわれが通常行っている日常生活を遂行するための行動がうまくできなくなるのです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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