正解のリハビリ、最善の介護

なぜいま「リハビリ」が重要視されているのか?

酒向正春院長(提供写真)

 以前、著名な大学病院でくも膜下出血の手術を行い、ずっと寝たきりの状態になってしまった男性(当時62歳)が、奥さんに連れられて私のところへやって来ました。

 その男性は手術自体は成功して命を取りとめ、術後は日本を代表するリハビリテーション病院に移りました。しかし肺炎を繰り返すなどして寝たきりのまま6カ月が経過し、医師から「もう、これ以上はよくならない。あきらめてください」と告げられたといいます。その後に移った療養型病院でも寝たきりの状態は続きました。呼吸を確保するために気管切開が行われ、口から食べることができないので経鼻経管栄養のチューブが鼻から挿入されています。しかし、奥さんはどうしてもあきらめきれない思いを抱いていました。

「まだ62歳なのに本当にこのままよくならないのだろうか。もう、しゃべることはできないのか、口から食べられないのか、外出できるようにならないのか……」

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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