高齢者の正しいクスリとの付き合い方

インフルエンザの抗ウイルス薬は症状の持続を1~2日ほど短くする

予防の基本は「うがい」と「手洗い」(C)PIXTA

 インフルエンザに用いられる抗ウイルス薬には複数の成分のものがあり、剤形にも経口内服薬、吸入薬、そして注射薬があります。以前は経口内服薬が使われていましたが、今は吸入薬が主流だと思います。これらの抗ウイルス薬はいずれも「ウイルスの増殖を抑制し、インフルエンザ症状の持続時間を短くする」ことを目的としています。つまり、クスリの力で体の中からウイルスを排除するわけではなく、あくまで「それ以上は増えないこと」を目的としているわけです。

 これらのクスリを使うと症状がすぐに楽になると考えている方もいらっしゃるのですが、実際は「症状が楽になるのが少し早くなる程度」なので、効果は実感しづらいかもしれません。成分にもよりますが、クスリを使用するとインフルエンザの症状の持続期間がおおよそ1日弱~2日程度短くなります。「それだけ?」と思われるかもしれません。しかし、高齢者や基礎疾患があるような高リスクの人の場合はインフルエンザが重篤化して肺炎などに陥ってしまう可能性があります。抗ウイルス薬にはそうした重篤化を防ぐ効果も期待できるため、高リスクの人には積極的に選択されます。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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