教えて放射線治療 ドクター黒﨑に聞く

膵臓がんはかつての予測よりもはるかに多く発症している

写真はイメージ(C)iStock

 一方、治療においては、残念ながら皆さんが期待するほどの抗がん剤の進歩はありません。フォルフィリノックス療法(5-FU・イリノテカン・オキサリプラチンの3種類の抗がん剤にレボホリナートをプラスする)を加えた多剤併用療法がもっともポピュラーな治療方法ですが、局所進行している場合では生存期間2年弱、遠隔転移を伴う場合は1年程度となっています。

 近年、BRCA遺伝子という遺伝子が壊れている患者さんには、オラパリブという新薬が使えるようになりました。しかし、この遺伝子が壊れている人は膵臓がん全体の5%程度に過ぎず、オラパリブが適応となる膵臓がんの患者さんは多くはありません。しかも、投与しても、その効果は悪くなるまでの期間が7カ月ちょっとぐらい延びる程度であり、ゲームチェンジャーとなるような抗がん剤ではないようです。

2 / 2 ページ

黒﨑弘正

黒﨑弘正

江戸川病院放射線科部長。1995年、群馬大学医学部卒。医学博士。日本専門医機構認定放射線専門医、日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医。JCHO東京新宿メディカルセンターなどの勤務を経て2021年9月から現職。

関連記事