アセチルコリンには、抗炎症作用があります。平たくいうと、アセチルコリンの不足は、火がついているのに、脳に備え付けられている「消火器」が故障しているような状況というわけです。
これは、アセチルコリンを補うことが、「病的疲労」からの回復につながる可能性があるということです。実は、マウスの実験をした時、脳内のアセチルコリン不足を解消するために使った「ドネペジル」(商品名アリセプト)という薬は、すでに認知症治療薬として使用されています。
これらのことから、新型コロナウイルス感染後に倦怠感を訴える患者に、比較的早い時期にドネペジルを投与すれば新型コロナ後遺症にならず、後遺症になっていても、早期であれば治療効果が見込めるのではないかと期待されています。
ドネペジルについては、すでに公的研究費による「新型コロナ後遺症に対するドネペジルの第2相の治験」が、2022年度~23年度の予定で行われています。この実験が成功すれば、新型コロナ後遺症の治療薬が手に入ることになります。また、抗うつ薬としてのドネペジルの利用にも見通しがつくはずです。
疲労の謎がここまで分かった