第一人者が教える 認知症のすべて

80代の親が脊柱管狭窄症で歩けない…手術するかどうか悩んでいる

写真はイメージ
無理のない歩行でも脳のアセチルコリンが増え海馬の血流が良くなる

 東京都健康長寿医療センター研究所では、なぜ歩行が脳に影響を与えるかを研究。ラットを用いて、「アセチルコリン神経を刺激すると、大脳皮質や海馬のアセチルコリンが増え、脳の内部の血管が広がり、血流が良くなる」「アセチルコリン神経を刺激すると、神経細胞死が起きにくくなる」ことを明らかにしています。

 東京都健康長寿医療センター研究所は、歩行が脳のアセチルコリン神経の活性に関係があるのではないかと考え、さらなる研究を行いました。

 まずラットをトレッドミルの上で「遅い」「普通」「速い」の3段階で30秒間歩かせ、海馬の血流と血圧を同時に測定。すると、いずれの速さでも、歩行直後から海馬の血流が増え始め、歩行をやめると徐々に元に戻ることがわかりました。血圧は、歩行速度が速いと著しく上がり、普通と遅い場合ではほんの少し上がるだけでした。

 そこで血圧があまり上がらない普通の速さでの海馬のアセチルコリンを調べると、増加していることが判明しました。

3 / 5 ページ

新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

関連記事