第一人者が教える 認知症のすべて

80代の親が脊柱管狭窄症で歩けない…手術するかどうか悩んでいる

写真はイメージ

 これらの研究から読み取れることは、無理のない歩行でも海馬のアセチルコリンが増え、海馬の血流が良くなるということ。高齢者では、記憶などの機能をつかさどる海馬で脳血流の低下が見られますが、それが歩行で改善できるかもしれないのです。歩くことは、脳の血流を良くするだけでなく、認知機能維持につながるさまざまな効果があります。フレイル(虚弱)やサルコペニア(加齢による筋量低下)を予防し、寝たきりリスクを低くします。

 スーパーに出かけることひとつとっても、脳へたくさんの刺激を与えます。「歩いて買い物に行く」「スーパーで何を買おうか考え、妥当な値段のものを選ぶ」「店員さんや顔見知りの人と会話を交わす」などなど。

 自分の足で歩けなくても車椅子などの手段はありますが、高齢で脚が痛くて歩けなくなった人では一般的に、自宅へ引きこもりになりがち。これが招く社会的フレイルが認知機能低下を引き起こすことは、広く知られています。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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