「不登校」「ひきこもり」を考える

親が身につけるべき「正しい話の聞き方・伝え方」10の原則~⑩

写真はイメージ

 この連載をここまで読まれた親御さんは気づかれているかもしれませんが、親子のコニュニケーションが行き詰まる背景には、親子のやりとりの中で、親である自らに喚起された「わが子の行く末や将来への不安」、「親として思うようにならない悲しさ」といった湧き上がるつらい感情に巻き込まれる──といったものが存在します。そのため、子の気持ちなど配慮する余裕がなくなり、無意識のうちに自らがつらさから抜け出すことを優先してしまっているのです。

 親御さんは、そのために「叱る」「正論を言う」といった先制攻撃を浴びせて自らの感情に蓋をすることに必死で、子の心など目もくれていないという現実に気づき、そのような自分の感情ファーストから、子の感情ファーストに切り替える必要があるということなのです。

⑩「親の感情ファースト」にならないように最大限の注意を払う

 ある19歳の大学生の男性Bさんのケースです。Bさんは大学に行けなくなり、自宅にひきこもりのような生活に陥っていました。親子の会話が最低限しかないBさんが、こんな話をしてくれました。

1 / 5 ページ

最上悠

最上悠

うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

関連記事