役に立つオモシロ医学論文

持ち家は賃貸住宅や公営住宅よりも長生き…では賃貸と公営では?

写真はイメージ(C)iStock

 世界保健機関(WHO)は、2007年に「高齢者にやさしい都市(エイジフレンドリーシティー)」という考え方を提唱し、高齢者が健やかで安心して生活できる街づくりに欠かせない8つのトピックを公表しました。そのうちのひとつが「住居」です。

 これまでの研究報告において、家賃費用の増加が健康状態の悪化と関連する可能性が指摘されていました。また、持ち家に居住している人は、賃貸住宅に居住している人と比べて経済的に裕福であり、良好な健康状態を維持できる可能性があります。そのような中、居住環境と死亡リスクの関連性を検討した研究論文が、「サイエンティフィック・リポーツ」という学術誌に2024年3月30日付で掲載されました。

 この研究では、日本に在住している4万4007人が対象となりました。このうち、持ち家の居住者は3万7761人、賃貸住宅の居住者は2280人、公営住宅の居住者は2490人でした。また、介護保険のデータベースから死亡記録が調査され、住居の形態と死亡リスクの関連性が解析されています。なお、研究結果に影響を与え得る年齢や性別、婚姻状況、最終学歴、就労状況などの因子について、統計的に補正して解析されました。

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青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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