知っておきたい「胃ろう」の現実 “拒むチャンス”は一度だけ

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 Yさんは救命治療で急性期を乗り切ったが、2週間たっても意識は戻らず、自力では食事が取れなかった。そんな状況で、家族は主治医から「ここは救急病院なので、これ以上の入院は難しい」と告げられた。さらに「点滴を続けた状態では介護施設に受け入れてもらえない。胃ろうをつければ入所できる施設を紹介できる」と打診され、家族は胃ろうを選択した。

 当初は家族も胃ろうによる治療に満足していたが、徐々に不満を募らせ、2カ月後には「もうこんな姿は見ていられない。早々に何とかしてください!」と非難をにじませるようになった。

「しかし、長期の胃ろうを中止するよう医師に申し入れても、現状ではそう意向は通りません。医師からすれば『医療行為を放棄する』ことは避けたいですし、安楽死問題にも抵触しかねません。また、後になって心変わりした家族から訴えられ、不作為の殺人罪に問われる懸念もあるからです。救急搬送から退院までの期間に胃ろうを拒むチャンスは、現状では医師から『胃ろうを作るかどうか』と聞かれたときだけと考えておいたほうがいい」(山本医師)

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